産業技術総合研究所/HYSTERIC GLAMOUR
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)が開発した「ファブリックスピーカー(音の出る布)」を内蔵したファッション関連プロダクトの成果発表会を開催しました。
本プロジェクトは、産総研との共同研究・協賛企業との産学連携により2025年4月より始動。
産総研の特許技術である、薄く、柔らかく、布地と同じ風合いを持つ「ファブリックスピーカー」を活用し、学生がポスト・デザイン思考のPBL* (課題解決型学習)をベースに、自由な発想でファッションやインテリアの試作品を考案しました。
発表会当日は、日本を代表するストリートファッションブランド「HYSTERIC GLAMOUR(ヒステリックグラマー)」とコラボレーションしたヘッドウェアやバッグをはじめ、インテリア総合の株式会社サンゲツ、伝統工芸の米沢織(nitorito)、米沢段通(滝沢工房)などと連携して制作した試作品と、次世代の可能性を提示する計3つのプロジェクトを、ファッションショーおよびプレゼンテーション形式で披露しました。
* デザイン思考をベースに産総研の技術コンサルティングによってPIIF向けにカスタマイズしたWill思考(人々を幸せにし、可能性を拡張し、生態系も保全する)のイノベーション創出スキル。
音が出るカーテン「ソナリア」
1つ目は、音の出るカーテン「ソナリア(SONALIA)」。サンゲツ、槌屋、槌屋ティスコ、そして、グループ校の東京モード学園インテリア学科の協力によって制作しました。
最大の特徴は、従来の大型スピーカーなどの音響機材なしで、世界観を損なうことなく音の演出ができること。
今回の展示では、「竹林」をテーマに、濃淡のある竹のグラフィックを施したデザインを提案。濃い色の竹の背面にスピーカーを内蔵し、旅館など和の雰囲気が漂う空間との相性がよさそうな音楽と涼やかな視覚効果をもたらす試作品を発表しました。
日常の中で自然や宇宙を感じるひとときを。「星を聴くマット」
2つ目は、日常の中で自然や宇宙を感じるひとときを提案する「星を聴くマット」。
現代の多忙な生活においてなかなかできない「星を見上げる時間」や「自然との繋がり」をコンセプトに開発しました。就寝前のリラックスタイムや瞑想、ヨガ、読書、音楽を楽しむといったひとときでの使用を想定しています。協業先は、米沢織の伝統を守り「オール・メイド・イン・米沢」を掲げる「ニトリト(nitorito)」。手織りの技術が活かされたマットやクッションは、非常に柔らかな肌触りと高い耐久性を兼ね備えています。
音を選ぶための帽子「HSPノイズキャンセリングパイロットキャップ」
3つ目は、「ヒステリックグラマー」の素材提供を受けて開発された「HSPノイズキャンセリングパイロットキャップ」。
学生が上京時に感じた「過剰な音情報へのストレス」という実体験から、日常の音を自由にコントロールする可能性を追求しました。 開発の背景には、外部刺激に敏感な気質を持つ「HSP」の人々の存在があります。従来のイヤホンでは周囲の呼びかけに気づけないという課題がありましたが、本製品は帽子に「Active Noise Cancelling」技術を直接搭載。騒音を打ち消しながらも、ファッションアイテムとして日常のあらゆるシーンに自然に溶け込む設計となっています。
「ヒステリックグラマー」北村信彦氏による試作品発表も!
最後に、ブランド「ヒステリックグラマー」を展開するオゾンコミュニティの北村信彦氏が、素材提供および共同開発による試作品を発表。ラインアップは、スピーカー内蔵のフライトキャップ、屋外で音楽を楽しめるトートバッグ、そして音が流れるぬいぐるみ“WEIRD FROG”など。このぬいぐるみが着用しているのは、徳島・阿波で裁縫・仕上げを施した「ヒステリックミニ(HYSTERIC MINI)」のTシャツです。
東京モード学園の卒業生でもある北村氏は、今回のコラボレーションについて次のように語りました。
「今回、開発者の吉田学先生の紹介を受け、元々音楽好きから始まり、今でも音がない生活は考えられない僕にとって、『ヒステリックグラマー』との高い親和性を感じた。」
「最新技術が登場した際、現代ではAIに頼りがちですが、アナログでフィジカルなもの、あるいは伝統的なものと先端技術を掛け合わせることで、新たな面白さが生まれるはず。日本古来の美と技術を融合させた提案で、海外の方々にも感動を与えられたらうれしい。」と、ファブリックスピーカーが持つ無限の可能性を強調し、発表を締めくくりました。
布が音を奏でるとき、ファッションは更新されるかもしれない。
2025年4月から1年間にわたり取り組んできた本プロジェクトは、スマートテキスタイル、ポスト・デザイン志向の実践、そして社会連携を横断的に学ぶ教育プログラムの一環として実施しました。
学生が企画立案から制作・発表までを主体的に担い、研究と教育の現場から生まれたこの「音の出る布」の試作品は、従来の「音を出す装置」という概念を超え、素材を起点に音と空間を再構築するファッションの新たな在り方を提示しました。
新素材「ファブリックスピーカー」は、ファッションのみならず、インテリアや空間演出、体験デザインなど幅広い分野への展開が期待されており、本学が掲げる「理論と実践が融合した先進的教育メソッド」を象徴する取り組みとなりました。
WWD JAPANにも取り上げられました!
“音が出る布”で学生や「ヒステリックグラマー」北村信彦が試作プロダクト発表
https://www.wwdjapan.com/articles/2350879
